特集 ベルソニカちゃんが 生まれた日
時は東京タワー完成の2年前、まさに日本全体がこれから始まる時代に心を躍らせていた昭和31年の春の出来事。鈴弥産業は完成したばかりの真新しい工場で始めての稼働日を終えようとしていました。
終業チャイム係のベルくんは、張り切って、おもいっきり体を左右に揺さぶり、みんなに仕事の終わりを伝えました。
「カラン・コロン」 「カラン・コロン」 「カラン・コロ…ころころころ」
あらら、ベルくんは張り切り過ぎて体を揺さぶり過ぎたみたい。ハガネを加工する機械の中に転がってしまいました。大変です。手を止め汗を拭っていた職人さん達も大慌て。なんとかベルくんを救出です。
「ベルくん!車の部品になっちゃうに!しょんないなぁ※」
優しい職人さん達は、ベルくんをもとあった場所にしっかりと結び付けてくれました。
しっかりと結ばれ、もう落ちる事のないベルくんは一安心。
職人さん達が帰った後、ベルくんは、もう失敗しないようにと、体を揺らし練習を始めました。
「カラ・コロ」「カラ・コロ」「カ・コ」
ん?なんだか変です。音が響きません。
何度やっても「カラ・コロ」「カラ・コロ」「カ・コ…」
あれれ?ベルくんが自分の体をよく見ると、ハガネの欠片がベルくんの舌ベロ※についていました。
ハガネを加工する機械に転がってしまった時についたのでしょう。
これが重くて鳴らないのかな?
それとも強く結ばれ過ぎたかな?
どうしよう?ベルくんは困りました。
しかし、ベルくんにはどうしようもありません。
ベルくんが悩んでいると小さな声がしました。
「わたしが動かそうか?私が動けば鳴るんじゃない?」
ベルくんの舌ベロについていたハガネの欠片ソニカちゃんの声です。
ベルくんは言いました。
「始めましてソニカちゃん。さっそくだけど頼むよ」
ソニカちゃんは大きく深呼吸をして全力で体を揺らしました。
ベルくんも精一杯体を揺らしました。
「カラン・コロン」 「カラン・コロン」「カラン・コロン」見事な共鳴です。
職人さん達がしっかり結んでくれたので転がり落ちる事もありません。
カイゼン成功です。ベルくんも大喜び。ソニカちゃんも大喜び。
「ありがとう」「こちらこそ」
職人さん達にも「ありがとう」
それからというもの、
ベルくんとソニカちゃんは50年以上仲良くベルを奏でています。
様々なカイゼンを重ねベルもソニカも大きくなりました。
いろいろなご縁のおかげです。きっと、これも何かのご縁ですね。
これからもベルソニカは日々の音色を重ね、
人と技術でしあわせを提供していきます。